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古民家再生:自然との共生を取り戻す

2024.04.11 |

コロナ禍を経験し、オンラインの可能性が広がる中、多くの人々が都会の生活を見直し、自然に寄り添う生活への関心を高めています。自給自足や半農半Xの生活、古民家での暮らしなど、自然の恩恵を受けながら、歴史や伝統に触れることに価値を見出す人が増えています。しかし、田舎への移住や古民家の再生には、その土地の自然環境や歴史を理解し、建物や敷地の問題点を正確に把握する必要があります。

古民家や伝統的な建築物の再生は、建物本体の修復だけでなく、その土地や環境全体への深い洞察が必要となってきます。このプロセスでは、水と空気の流れ、水脈環境の調和が、建物の長期的健全性にとって不可欠な要素になります。古来から、人々は生活に必要な水を確保するため、自然の恵みが豊かな場所に住まいを構えました。こうした場所では、水が湧き、空気が循環が良好で、生き物が息づく環境が自然と形成され、作物の栽培にも最適でした。

しかし、高度経済成長期以降の無計画な開発により、これら自然のバランスは大きく崩れました。道路建設、ダム建設、河川の護岸工事などにより、水脈が遮断され、古民家の床下に水が溜まり、建物が沈下し、畳が湿気るなど、様々な問題が引き起こされています。これらの問題は、単に建物を修理するだけでは根本的な解決には至りません。

解決策を探るにあたり、まずは敷地や周辺環境の深い理解が求められます。空気と水がどのように停滞し、どこで問題を起こしているのかを五感を使って、大気中の空気の淀みを感じ取ったり、土の表情を見たり、足の裏で硬さを感じたり、場合によっては土の匂いも嗅いだりと感覚測定し分析する必要があります。問題が明確になれば、地中の空気と水の通気性と浸透性を高め、自然の機能を取り戻すことが重要です。これにより、植物の根や虫、動物が生息し始め、大地が安定します。古民家自体も再び「呼吸」し、建材の傷みが修復され、持続可能な再生が可能になります。

水脈環境の整備には、サイフォン原理の理解も役立ちます。サイフォンは、一方の容器から別の容器へ液体を移動させるために空気圧を利用する仕組みです。この原理を自然環境に応用することで、水と空気が一体となって動き、生き物が息づく環境を育んでいます。例えば、地形に落差を設けて水の流れを促し、有機物を利用してその流れを安定させることで、水脈環境を自然に調和させることができます。



また、古民家の基礎をコンクリートで固めるのではなく、空気と水が浸透しやすい材料を使用することで、水脈環境への圧迫を避け、自然との調和を図ることが可能です。

このように、自然と調和しながら古民家を再生することは、建物を修復すること以上の価値を持ちます。それは、自然の力を理解し、その力を生活の中に取り入れることで、持続可能で豊かな暮らしを実現し、地域社会の活性化にも貢献します。