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大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート③

古民家周りの水脈整備が大体になったところで次は、地上の風通しもよくしていきます。下草や低潅木の風の剪定作業です。風が吹いた時に枝や葉っぱを削いでいくところで人が代行して枝葉を削いでいく作業になります。
風は立体的に縦にも横にも渦を巻いて入ってくるので、水平的に揃えるという人目線の概念は捨て、風にふらつく部分を削いでいくように作業を行います。目の視覚と手で感じる重みをうまく組み合わせながら道具を通して風を送るイメージで行います。
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水脈を整備し、植物の地上の風通しを良くすることで、植物の根と水の中に空気が程よく通り、地上の風通しと地下の空気の流れが連動しながら一体的な地上と地下の空気の流れのバランスが取れて生物が安定してくれる。生物が安定することは水脈が安定してくれることにつながり、大地の中も脈の機能を低下しないように生物を大事にするように脈を張り巡らせて作動してくる。
水脈と大地の環境も生物の環境も密接に繋がり見事に手綱を引きながら一体的な動きをしている。

この基本に習って、文字や数字で伝えることが中々できない体を通して息づく空間と対話しながらやっていく作業が大切であります。また、人の住環境作りも建物から庭から水脈から全て繋がっていくような空間作りが必要である。と話してくれました。

フィールドを畑エリアに移し、ここは、ススキ畑となっています。かつては、これを材料に屋根を葺いていたのでしょうか。
ここでは、もう16時過ぎ。それでも、矢野さんは丁寧に説明をし作業も進めてくれます。
参加者はここでも風の剪定をし地上の風通しを良くしていきます。子供もできる作業でみんな楽しく作業を進めます。
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風でなびくような位置で刈ってあげると、伸びようとする力が落ちる抑制ホルモンが働いて、荒根が萎縮し細根化して、根の構造が変わってくる。細根化されることで周りに空気が入ってきやすくなり呼吸が安定し、また、根から植物の体内に送られる水の圧力が抑えられるので伸びも大人しくなってくる。要するに樹体が風に対して安定するだけで植物の根の呼吸が安定します。周りとの関係も、風が通り、水や光も通りやすくなり、お互いそれらを求めて競い合う必要がなくなり、みんな落ち着いた生活シフトに入ってくることになります。
これを根こそぎ刈るような草刈りをすると、逆に成長ホルモンが働いてきます。根こそぎ刈ると植物は、全力をあげて元に戻ろうとします。
風の削ぎは、生きている生き物たちを大事に手なづけ、均等に光や水や空気が行き渡るような環境を提供してくれているのです。結果的に生き物たちに水脈が保たれるような相互扶助の関係になっているのです。風が通れば、地中の中の空気も通り、生き物たちも呼吸しやすくなってきます。
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矢野さんが重機で水脈の溝掘りを進めてくれたのを見て話してくれます。
それは、野山のイノシシが餌を食べに来て去っていった後の様子にも見えます。動物達は生活することで水脈を保全しくれているのです。動植物たちはこうやって自然と水脈との関係を築き上げてきています。だから、人間も本来はこれをやらなければならない。生活の糧としベースにしていくことで見渡す限りの自然の生態系環境の一躍を担うことができるです。これをさておき、自分たちの目に見える業(林業、農業、造園、建築、土木)に毎日のように勤しんで訳ですが、それを束ねてる作業が大地を保全する作業になっていかないといけない。
いつまでもこれが続くと思っていても、このわずか50年で大地が悲鳴をあげてきている。こんな時代は今までなかった。何万年と続いている人と自然との関わりの貯金をあっという間に食いつぶしてきてしまった。これを自分たちの業や生活と並行してやっていかないといけない。これが業や生活を支える土台となっている訳ですから、意識されていないことはおかしなこと。
これをボランティアでやるのではなくて、経済活動や社会活動にもきちんと位置づけされていかなければ自分たちも安心して生活できなくなり、ましてや次世代には引き継いでいけない。

では、草を抜くことでの影響は?と質問してみました。
草は何をやっているのか、草が生活することよって大地の中の空気や水の循環が保たれているという機能を担っているのだから、除草することによってそれが滞らない対策をしているのならまだいいけれど、手が掛けられなくなればなるほど、逆に草に環境改善の機能を委ねて、草を大事に管理し環境を改善してもらうべきである。
ましてやこれだけコンクリートなど無機的な空間作りになってきているのだから、土木の視点もコンクリートから木を導入して、植物たちに無機物に空気や水を通してもらう有機的な土木の視点に切り替わっていくべきである。人だけでこの50年の付けを返そうとしたら大変なことであり、だから植物たちの力を借り、有機物を主体とした有機的な空間作りをしていかないと追いついていかなくなってしまう。
草との向き合い方がその出発点となると話してくれました。

そして、山の方まで水脈をつなげ二日間の作業は終了となりました。
古民家に戻ってまとめです。

敷地全体が空気や水の通りが良くなり全体の環境が息づいてくると、人の体の健康や気持ち含め呼吸が良好になってくると思います。
環境改善をしてきて思わされるのは、自然の環境改善が結果的に人の環境改善に繋がってきている。それを大事に持続的に維持管理していく向き合い方、生活や業のあり方が備わってくると人の体も気持ちも健康的に変わってくるのではないかと思う。逆に塞がっていくと人も環境も目詰まりを起こして日常的に社会全体もおかしくなってくる。
小さな環境改善の手の入れ方ですが、大地の環境と生物の環境を大事に見ることで地上と地下の気象環境が変わってくる。これが自然界の鉄則であり基本的なこと。部分と全体をつなげた日常的な作業を大事に深めていけばずっと、自然と共に深まっていく。そういう生活や空間の姿を次の世代に引き継いでいくことが大切であります。この自然界のシステムを大事に日常的にみていって欲しい。
という、矢野さんの言葉で締めくくられました。

とても濃い二日間となりました。
千葉の高田造園設計事務所さんのフィールドや関西での大地の再生講座に参加させていただき、この「杜の園芸」矢野智則さんの考えを地元の静岡浜松でも広めたいと思っていました。
そんな時、友人の天竜で木こりをやっている前田さんが自分で山を持ち、この山はこの先100年以上続くみんなに愛される山にしていきたいんだ。と聞き、では、矢野さんの考えを絶対この山でも取り入れるべき、と話したのがこの講座開催のきっかけでした。

この二日間で延べ人数100名近くの人が参加され、多くの人が関心持ってくれたことに嬉しく思い、また、それに見事に応えてくれた矢野さんはじめ、杜の園芸のスタッフの皆さんには感謝致します。

途中、これは、大地の再生講座なのかそれとも僕ら人を再生してくれているのか分からなくなることもありました。(笑)それだけ、これから生きていく上で必要なことで、そして今までの考え方、自然との付き合いかたがおろそかだったものかと反省させられました。

何千、何万年続いてきた人と自然との関わりの貯蓄を東京オリンピックからこの50年で食いつぶしてきた。そして、大地は悲鳴を上げている。この矢野さんの言葉が印象的でした。

大地が悲鳴を上げているなんてそんなの分からないよ。って思う人もいるかもしれないですが、現に起こっているのです。
土砂崩れ、あれは、自然災害ですか?!
コンクリートで覆われた山は呼吸ができなく水も空気も滞っている状態です。自然を人工物で力で抑えつけるのは無理があると思います。自然は無理がかかればそれを自ら崩して安定しようとするのです。
今の流れを止めるのは困難で、現代の工法を完全否定するという訳ではなく、そこに有機物を加えた大地に空気と水を通る仕組みにしていけばいいのではないかと思います。

古民家周りの水脈を通して、谷からの涼しい心地よい風を感じ、ススキ畑では風の剪定をしまたそこでも心地よい風を感じることができました。自然は手をかけてあげればすぐ答えてくれました。
変わらなければいけないのは我々人間の方ですね。人間の考え方を転換しなければ、いずれ住めない環境になってしまうのでは・・・。子供たち次の世代はどんな社会になってしまうのか・・・。

やっぱりこれからは、有機物を主体とした有機物産業を確立していかないといけない。それは、ボランティアではなく経済的にも社会的にも評価されるように。
植物の力を借り、植物に応援してもらうような空間にしていかなければなりませんね。
では、自分に何ができるのか、土砂崩れの現場を修繕することもできません。
講座に参加しただけでなく、自分のフィールドに戻っても少しづつ実践していければと思います。ちょっとでも有機的な空間作りをはじめ、ミクロもマクロも相似性。という言葉を思い出し、その点から線へ面と連鎖してくれればと思います。

続く
レポート①
レポート②

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