浜名湖花博2014に出展 〜雑木の庭と共に暮らす〜
4月5日から6月15日まで開催する浜名湖花博の10周年記念事業に庭を出展致します。テーマは『雑木の庭と共に暮らす』です。下記にコンセプト、思いを綴りましたのでご覧下さい。(ちょっと長いですが・・・。)
樹々の力を生かした住まい、庭と家が調和した暮らしの提案
10年前の花博から私たちは、震災を経験して暮らしや自然、エネルギーに対する意識は変わってきました。住宅産業でもより一層、高気密・高断熱の性能重視の建築や太陽光などの自然エネルギー推進の動きも盛んになってきました。それらもいいけれど、身近には樹々という素晴らしいものがあります。季節や時間帯によって見え方もかわり、枝葉が揺れれば風を感じ、葉音が聞こえる。木漏れ日ができれば光を感じ、五感に刺激を与え心豊かにさせてくれます。上手に使えばそんな樹々は住環境を改善する力を発揮してくれます。夏場の暑い日射しを遮ったり、涼しい風を運んできてもくれ、熱環境にも対応できる力も持っています。これからは、これらの樹々の力を生かした住まい、庭と家が調和した暮らしを提案していくことも一つの考えだと思います。
樹木を階層的に密植して植付ける
樹々の力を借りて、心地良く過ごすためには、樹々も快適に成長しやすい環境を作ってあげる必要があります。自然の山では、樹木が1本で育っていません。樹木は1本で生きているのではなく周りの樹々と共存しながら生きています。一般家庭の庭でもなるべく自然の山のような環境をつくってあげる必要があると思います。樹木は1本で植えると幹や根元に太陽光があたり乾燥しやすくなります。乾燥すると栄養分は上に運ぶことができなく頭から枯らし始めます。痛んだ樹は中々元には戻らないのです。そのために1本で植えられた樹は太陽光が当たらないように枝葉を広げてきます。そうやって成長した枝葉はきれいな樹形を損ね、病害虫も発生させやすくなります。そうならないために二次林の用に日射しに強い落葉高木の下に中木層の樹、高木の木漏れ日でゆっくり育つ常緑樹を配置するようにしてお互いが木陰を作り、守り合うように密植し階層的に構成し樹が1本としてではなく庭全体として成長するように考えています。健康的に育ってくれた庭は私たちに心地良く過ごしやすい環境を提供してくれるようになります。
家際に落葉高木、四方に樹木が入る建物配置と角度
更に快適な住まいを実現するために、建物の四方に樹木を配置できるようにしています。家際に落葉高木を配置すれば夏場はウッドデッキや室内に木陰を落としてくれます。冬場は葉を落とし日射しを取り込むことができます。また、北面と南面の両方に木立を作れば温度差が生まれ風が発生します。建物の間取りと合わせて考えれば涼しい風を室内に取り込むこともできます。そして、樹木のスペースを確保するために建物の配置をどこかの境界に平行にするのでなく斜めに振ります。平行だと奥行き感が感じられなく限られたスペースしか生まれません。そのためには建築と造園を別物として考えるのではなく同時に考えていくべきなのです。建築が終わってから考えるとベターなことはできますがベストなことはできないのです。外空間を含めて敷地全体を使って住環境を考えていくべきだと思います。
気温を下げてくれる真砂土の三和土
玄関までのアプローチと庭の作業スペースは真砂土と石灰を混ぜ、たたいて固めるという仕上げをします。これは、透水性があり湿気を含んで蒸散してくれるので気温を下げてくれます。コンクリートやアスファルトだと夜になっても気温が下がりません。更に今の時代は家の中に入るとエアコンをかけますので一晩中気温が下がらないのです。この仕上げならコストはコンクリートよりも安いし早く施工できます。また、要らなくなったら砕けば土に戻すことができます。お金をかければ良い物ができる訳ではなく、住環境を考えながら素材選びをしていく必要があると思います。
落葉を資源とする落葉ストックBOX
庭があれば落葉の問題が出てきます。庭には、落ち葉や刈草をためることができる落ち葉ストックのボックスをつくります。落葉や刈草をためておくと堆肥になってくれます。落葉を掃除してゴミで出すという考えだと段々苦痛に感じることがあります。そうではなく堆肥化して資源とする。それを畑や庭に利用するなどして循環させていくことで庭の楽しみが一つ増えてきます。
これからは庭を鑑賞物と捉えるのではなく住環境を改善するものと考える
今回の庭はこれらのことを考えながら作った庭です。これからの庭は庭を鑑賞物として捉えるのではなく、また、建物の付属品として考えるのではなく住環境を改善するような庭が求められると思います。庭と建築が調和し外回りから考える住空間がもっと増えてくることを望みます。