土砂崩れの応急処置、牧之原市大地の再生講座
先日、定期的に開催している牧之原市 mori to umiさんのフィールドで大地の再生講座を開催しました。
数えればもう11回目。でも今回は、今までと違ってちょっと特別な回となりました。
それは、台風15号で各地で土砂崩れや洪水の被害を受けたあとであり、ここのフィールドも数カ所土砂崩れが起こってしまいました。
それを踏まえて、なぜ土砂崩れが起こったのか、起こったらどう処理していけばいいのか?!今回は、それがテーマとなりました。
前回のブログもご覧ください。なんで、土砂崩れが起こったのか、書いてみました。
これら土砂崩れの原因は、簡単に言えば、抜きの機能が弱まってしまったからだと思います。
言い換えれば、本来水と空気が抜けないといけないところが滞ってしまったから、詰まってしまったからだと思います。
この山で言えば、ため池部分です。
この山のため池は、谷筋の終点がため池になります。
また、このため池から更に下に水路が流れています。
水路には開渠としてはつながってはなく、地下水脈を通じてこの水路に流れ出るところは目で確認でます。
昔は、このため池の水を水路を通じて下の田んぼに利用されていたようです。
今では、その田んぼはグラウンドと建物が建ってしまっています。
要は、そもそも、水路への排水機能が弱いのと、田んぼは無くなってしまったので、水と空気の抜けの機能が弱くなっていました。
今までの大地の再生講座でその水路では、溜まっていた泥あくを掻き出したり、ため池の外周を溝掘りして水と空気を動かして、下への浸透力を増すメンテナンスを行なってきました。また、ため池からのオーバーフローも2本通していました。
しかし、結果、それでも土砂崩れが起こってしまった。
それは、なぜだろう・・・。抜きの機能がオーバーフロー2本だけでは足らなかったのか?!
そんな目で現場を観察していたら、やっぱりそうでした。
ため池からオーバフローして泥が溢れ出ているところがありました。
水と空気が抜けきれずに滞っていたのです。
留めすぎて、泥水が溢れ出たのだと思います。
昔は、田んぼの利用もあり、水を吐かすところがあったからよかったのだと思います。
その田んぼも埋めてしまい、ため池だけが残されてしまった。
ため池に溜まりに溜まった水は溜めきれずに 泥と一緒に溢れ出ていました。そして、谷筋に水がどんどん溜まっていく。
斜面にも水が溜まり、斜面は、水をたっぷりと含み飽和状態になり、耐えきれなく崩れたのかなと予測できます。
今回の土砂崩れは、一時的な降水量としては観測観測史上最もな降水量だったと思いますが、それだけではなく、人の開発と複雑に絡み合った天災だったと思います。人の開発は、経済的にも暮らしにも欠かせないものだと思います。それを単に否定しているわけではありません。
ただ。人の開発によって自然を傷めつけるならその分、人が自然環境をケアし、メンテナンスする必要があるのだと、今回を通して改めて感じました。
今回の土砂崩れの応急処置として作業することは、まずは、その詰まりを抜いてあげること。
下の排水路に流れ溜まった泥あくを掻き出し、崩れてしまった法面を、空気と水が抜けながらも安定できるように有機物を使って土留めをすること。
空気と水が抜けるということがポイントだと思います。
そして、ため池から排水路へのオーバーフローの脈をもう1本追加しておくこと。
いざという時のためと、谷筋から集まる空気が抜けやすくなるので、水循環もよくなると思います。
空気が抜ければ水も抜ける。
灯油をタンクに移す時に使う、赤いシュポシュポ、あれは、空気が動くことで液体が動きますよね。
空気と水は一体に動いているので、水を動かしたいなら空気を動かすことが大切だと思います。
深い脈ができたとこは、人も通るので、丸太で橋をかけました。
人のためには、脈がない方が歩きやすいです。しかし、人優先ではなく、自然の機能を優先してあげることが大切だと思います。
谷筋の元々あった小さな脈も泥で埋まってしまいました。
ここを、みんなで脈を掘りため池まで繋いでいきます。
実際崩れた場所に着いた頃にはもう時間はありませんでした。
時間がない中でできることをやっていきます。
土砂崩れは、山が呼吸不全を起こして、呼吸しやすいようにもう一度安定した地形を作り直すのが土砂崩れだと思います。
人から見ればマイナスの出来事。しかし、自然環境からみればプラスの働きではないでしょうか。
流れてきた木と石と土を絶妙に組み合わせて置いていきます。それが、空気も水も通りながらも安定している地形を作っています。
だから、これらを全て撤去してしまうのは勿体無いというか、御法度ではないかなと思います。
自然が置いていったものを基本に脈上に空気と水の流れを邪魔してそうなものだけをチェーンソーなどで撤去してあげます。
このままだと雨が降ればもう一度表層の土を流していきそうなところを丸太と杭を即席作って土留めをします。
この時も、やはり、空気と水の流れを意識します。丸太の向きを互い違いに水が蛇行するように組んでいきます。
水が表層で走ることのないようにしっかりと浸透するように仕立てていきます。そうすれば、水だけでな空気も浸透し、生き物が生き継ぐ土壌環境へと変わっていきます。すると、微生物から菌糸、小動物など生き物がよってきて、されに空気が通りやすく、眠っていた種子なども発芽し根が張り地形が安定してきます。
人ちょっと、プラスの働きに舵をとってあげればきっとあとは自然が勝手に再生してくれる。
それだけでいいと思います。
土砂崩れの応急処置としてやってはいけないのは、土嚢袋などで、全て土を留めてしまうことだと思います。
水と空気を止めてしまえばまた崩れる力が働きます。
土嚢を使うなら、ずらして置いて水と空気が抜ける道を作ってあげるなどした方がいいのかなと思います。
溝を掘ったり、穴を掘ったり、より水と空気の抜け道を作ってあげることが応急処置として大切なことかなと思います。
この、土の中でも空気と水の対流している気象環境があるということをたくさんの人にも知ってもらえたらと思います。
杜人(もりびと)〜環境再生医 矢野智徳の挑戦
この映画を見てもらいたいです。
11月19日(土)菊川市の小菊荘で自主上映会を開催いたします。
そのあと、簡単なフィールドワークも開催します。
ぜひ、お越しください。
申し込みは、こちらからよろしくお願い致します。