表層5cmのキセキ 「大地の再生 in ゆの里 大地の仕組みと水の仕組み」 1日目
春分の日の前日2日間 、様々な生命が動き出そうとしている時期に、高野山のふもとにある、弘法大師ゆかりの土地に、金水、銀水、銅水、という三つの水が湧き出ている「ゆの里」で大地の再生講座が開催されました。
「ゆの里」は、この水を科学的にも解明しようと、水の研究施設「ゆの里アクアフォトミクスラボ」も併設し世界中からも科学者が集まるというところでもあります。
大地の再生は五感を大切に感覚作業、感覚測定で改善作業を進めていますが、そこを水の科学視点で読み解いていく、まさに「大地の再生」と「ゆの里」それぞれの視点が渦流のように絡み合う、大地の再生創始者の「矢野智徳」とゆの里社長「重岡昌吾」の夢の対談が実現しました。
僕は、昨年7月に山下さんと河合さんに連れられて初めて「ゆの里」さんに訪れました。重岡社長の水のお話を伺い、水の視点すごい!大地の再生視点と一緒だなと感銘を受けたその後に、大地の再生の視点を重岡社長に説明させて頂きました。
それに対して、重岡社長はご丁寧に水の働きやシャウベルガーの視点なども含め解説していただき、大地の再生の視点は当たり前のことでわかりやすく、たくさんの人に知ってもらうべきですね。とおっしゃって頂いたのが始まりでした。
12月には、矢野さんもゆの里さんへお連れし、重岡社長と矢野さんと意見交換の場をセッティングさせて頂き、気付けば4時間を超えるほど、、夢中に話していました。(笑)
矢野さん自身も今までやってきた五感作業が、科学で証明できるかもしれないと喜ばれてたのが今でも浮かびます。
そして、この話をもっとたくさんの人にも共有したいと思い、今回のイベント開催に繋がりました。
初日最初のプログラムは、大地の再生矢野さんのお話会です。
まずは、いつもお馴染みの大地の再生視点の環境の見方からのお話です。
地球環境は、大地と生物と気象の3つでまとめられ、更に地球環境を大きく取り巻いている掴みどころのない宇宙環境が存在している。
宇宙環境がこの3つの地球環境を動かしているので、宇宙環境を確認しながら地球環境も見ていく必要がある。
ここが重岡社長の水の話ともリンクしてきますね。宇宙の果てしない渦の世界が、水や空気の渦流ともにフラクタルで形成されているということ。
人の開発によって大地の環境が傷められ、大地の脈に泥あくを生み出し、生物環境や気象環境へはね返り、結果として異常気象や異常に生物が多発したり、土砂災害などが起こったりと環境全体としておかしな状態になってきている。
環境全体としてその分野で起きていることを一つ一つ突き合わせながらなぜそれが起きているのかを見ていくことができていない。
専門特化している中で他のことに気を回していくのができなくなっていて、それに関連することが見えなくなっていることが問題である。
今の社会は便利を追求して反面、身近な環境が見えなくなってしまった。
都市の環境整備、里山、奥山の整備、地域のそれぞれの場所にあった空気と水の循環機能をもう一度見直して取り組んでいかないといけない。
自然の機能に沿って、自然も人もお互いに譲り合うような視点で、人中心に度を超えない土地利用をし、自然の無言との対話を積み重ねていくような付き合い方を見直していかないと環境がおかしくなっていく。
昔の人は、空気と水の循環を人の暮らしの中に応用していた。もう一度昔の人の知恵や文化を掘り起こし、地域らしさを見直していく、今の時代にあった流域社会のあり方や連携の仕方が見えてくるのではないかと思う。
最後には、水の研究と大地の再生の視点が実用的なところでスクラムを組みながらできるといいですね。
と締められました。
続いて重岡社長のお話です。
ここゆの里の地は、空海が高野山を開く100年前の聖地という場所で、金水、銀水、銅水という三つの不思議な力を持つ水が湧き出る場所です。
高野山に通う人からここの水は不思議な力を持っているというのが広まり、それは空海様が予言していた水ではないか。神野々の下にすごくいいお水ががあって後に多くの人が救われる水がここにあるという言い伝えがあったと言われています。
そして、このお水で病気や火傷がよくなったという様々な体験も届いたそうです。
ゆの里の成立ちのお話から始まり、水耕栽培の挑戦のお話や「アクアフォトミクス」という共同研究を始められ、更には科学的な専門的な興味深く、大地の再生の視点とリンクするお話が聞けました。
水耕栽培を通して、微生物は環境に併せて必要なものが増えていく、ということがわかったそうです。
葉っぱが黄色くなってしまったから窒素を入れてみたでも、窒素を好む菌が増えてしまった。逆に窒素を入れなくすれば空気中の窒素を固定させる微生物が増えた。
結局は空気と水が循環しないと生命体はダメになってしまう。自然って面白い、人が手を加えることでダメにすることがいっぱいあるんだなと感じられたそうです。
光と水の関係性を読み解く科学である「アクアフォトミクス」という研究では、水の関係性を調べれば、病気の診断もできる。水は全て繋がっているので、情報を共有している。
水というのは、必ず周りと繋がり、ネットワーク社会をつくっている。水の構造が機能を決める。同じ成分が入っていても全然違う、というお話が聞けました。
水には「ジェル」のような水もあるというお話。
水は、液体、固体、気体だけでなく、液体と固体の間のジェルのような水もある。
このお話は、普段土を扱っている僕らにして、すごく興味深いお話でした。
土の中でも、水は勾配に関係なく勝手に流れるということです。
水分子と馴染む物質にくっつくとその境界に水分子だけが綺麗に整列して特殊な構造を作るのがわかってきたと言います。
水は、光を受け取ることによって電子だけを集めたプラスとマイナスが綺麗に並ぶ層ができバッテリーのような層を作る。
プラスとプラスが近づくと反発して勝手に流れる。
体の奥深くや土の中では光が届かないけど、その役割を担っているのは微生物で、微生物が物を分解すると光を出し、その光を使って有機物の周りに膜を作りその表面では水が送られるように流れてくると言います。
微生物が豊富な土壌が必要で、水に親和性の高い根などが必要なのだとわかります。
大地の再生で水脈改善に使うときに一般土木では砕石を使いますが、竹や枝など有機物を使う必要性がわかったような気がします。除草剤を散布して微生物を死滅させてしまうことが土中の水と空気の循環の滞りを生む原因になることがわかりますね。
そして、最後に心に響くメッセージをいただきました。
水は、共鳴してている。循環している。
そこでできた形と同じ仕組みが共鳴して別のところで同じパターンとなって連鎖していく可能性がある。フラクタルな現象が起こってくる。
例えば、地形の表層で水の動きを取り戻してくれば、他の場所でも共鳴して循環がとりもどされるのではないか。
この場所が変われば橋本市が変わる。橋本が変われば和歌山が変わる。和歌山が変われば日本が変わる。
フラクタルとして共振を起こして変化していく世界を大地の再生のみんなと動き出すきっかけができるのは、嬉しい。
脳の中の細胞も宇宙の銀河もフラクタル。同じパターンを持って動いている。切り離されて連鎖が止まったたら病気や問題を引き起こす。
でも、自然はちゃんとバランスを取ろうと頑張っている、自然の力をうまく私たち人間がサポートできるように手を入れるようにしていけばいい。
ようやく、その気づきが得られるタイミングがきた。
物質の価値ではなく情報や循環が大切。
地域が本当に変わっていくかみんなとみていきたい。
実は、作業前のビフォアーの土のデータをとった。
アフターのデータと見比べて、他の地域のデータも必要ですが、作業の結果、水が動き出したからこんなに環境が良くなったと伝えられるようになれば、いいですね。
そうすれば行政も変えられる。国も変えらるのではないか。
と、重岡社長はお話せくださいました。
大地の再生の感覚視点と科学が融合し始めた瞬間に思えました。
災害や苦しんでいる自然の姿を見て、もうダメなのか・・・と思うことがあります。でも、矢野さんはまだ間に合う。呼吸をしている限りそれを大切に繋いでいけばまだ大丈夫だと普段話をしてくれます。それに加え更に重岡社長が科学的にお話してくれました。
これからの未来に希望がもてた気がします。