大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート②
座学と周辺環境の矢野さんからの解説も終わり、午後からは、山を背負っている古民家周りを中心に水脈改善の作業です。
地上と地下は鏡のように映ると言います。地下の風通しが良ければ地上の風通しも良くなる。大気流が地形に沿って常にかかり、それが谷風として山から古民家周りに流れ、更に建物の隙間にも流れ込み、石垣から杉にも抜け、谷に抜けていく。それが一体的にバランス良く保たれていると建物も湿気が滞ることなく長持ちしてきます。石垣、杉なども健全な状態となってくる。そのバランスが崩れると古民家は痛み、石垣と一体となっていた杉の巨木も痛み、山の谷(水脈ライン)は泥や落ち葉の堆積で埋まり、機能を弱めています。
それが今の状態、何百年も続いていたここの環境はこの50年で痛んできてしまいました。
作業内容は古民家周りを中心に山から石垣へと抜ける谷ラインの地下の風通しのための水脈改善をしていきます。
矢野さんがブレーカー付きの重機で溝掘りをし、我々参加者はそのあと炭を入れ空気通しのパイプを埋設し、枝葉や竹などの有機物を戻していきます。
住環境、里山全体の地上部から地下部の風通し、水通しなどの気象環境に伴うような環境づくりができるかどうかにかかっている。大地環境と生物環境と気象環境が、この敷地の中でうまく一体となって循環する生態系をつくるような形で人の住環境がつくられていくと、全体のバランスがとれる空間になってくる。
これがバラバラだとうまく機能しない。自然の生態系は地形に空気と水が通りながら水脈を作り、生物の環境が水脈を中心に広がって、水脈を守るように生活している世界であるから生き物たちが、日常的に安定して生活を持続できている。そのような空間作りが必要でありまた、それが水脈を保全することにも繋がってくる。
日夜動いているのは空気と水。この風と雨の動きがこの地球環境の中で大地の環境と生物の環境を作り出していて、地球環境をつくっている。風や雨などで自然に安定した自然の空間を人が壊してきた。そんなことをはじめたのは人間だけである。人が開発しても自然を痛めないで、水脈を痛めない環境作りがポイントであります。
作った水脈は枝葉などの有機物で保護されパイプを中心に空洞化しているのでそこの隙間に向かって大気が空気を押し出すように動く、地下部の空気が動くとそれに伴って地上の空気も地下部に入って動き出します。また地下部に入った空気を埋める様に廻りから空気が向かってくる。そうすると谷間の空気が家廻りにも流れてきます。そうなると建物廻りの淀んでいた空気や湿気や嫌な臭いもなくなってくる。今日中に建物廻りの水脈を繋ぎ一晩寝かす事で翌日の空気の流れは一気に変わってくることでしょう。と一日が締めくくられました。
二日目、参加者より先に会場入りしましたが古民家の裏に廻ると谷間からの涼しく心地良い風を感じることができました。
これが昨日、矢野さんが言っていた地下の空気が動くと地上の空気も動き出すということなのかと体感できました。それは、雨上がりの一日目と晴天の二日目の天候の問題なんじゃないの?!と疑う人もいましたが、でも、明らかに山から風が流れているのが体感できたのです。空気の流れが変わったのです。
矢野さんは何者なのか。空気も操れるのか?!ナウシカか(笑)とも思ってしまった。一日だけの参加の方にも感じて欲しかったところでもあります。
古民家の再生も建物本体だけをリフォームするのではなく、その周辺の空気の流れを改善することが大切だと思います。外回りの水脈改善をしながら建物の中にも空気を送り込み湿気などを吐き出しあげることで古民家は復活してくるのだと思います。
「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」時間の制限がある中で急がなければならないこともあるけど、焦らないで慌てないで全体のバランスはゆっくりと見る。空気のような繫がりを持って作業を進めてほしい。という、矢野さんの言葉から二日目がスタートします。
一日目の作業でパイプや枝葉を入れたところに埋め戻しの作業からになります。これも、ただ単に土を戻すという訳ではありません。
最後の表層の仕上げになるほどやさしいエネルギーで仕上げていくようにします。一年を通して雨風の動きがどのように環境を作っていくかを考える。強くエネルギーを掛けて土石流のような水の流れで地形を作ったことに対して、普段の雨風が仕上げをしていく細やかな日常的な雨風がしていくことを人が雨風になったつもりで、代行して仕上げていくようにします。
雨風がやっていることはムラがない。すべての空間に対してムラなくしている。それに習って雨風が少しずつ、波紋を広げながら均していくようにする。雨降って地固める姿は雨が通って空気や水が通りながら土圧と水圧で締めて安定させる。それに習って足で踏みながら水圧で押し込んでいるところに土砂を持っていくイメージで空気や水が抜けるところを残しつつ土を戻していきます。人が作業した埋め戻しはある程度ムラがあってもこの基本を守っていれば、本家本元の雨や風が修正してくれます。基本ができていないと雨や風がそれを壊して安定しようとしてくると言います。
基本が抑えられているかどうか確認しながら丁寧に気を掛けながら作業をする。時間も限りがあり、先を急がないといけないのだけど急ぐがあまり本質を忘れてはマイナスになることもある。「焦らず、慌てず、ゆっくり、急ぐ」この合言葉のような文句を思い出し全体のムラを調整しながら作業を進めていくようにします。
気の動き一つでプラスでもマイナスにもなる。気を安定させれば持続もする。日常的に安定しながら気をかける訓練をすることが大切で、ここに住まいながら、日常気をかけて作業していけば、この空間は植物たちが応援してくれるようになってくる。
業者に頼めば力任せにしてしまう作業を悪くなったらみんなで気をつかう結い作業を行えば、気遣いと行動が繋がり心地よい空間が持続していくようになってくるといいます。
これは、大地の再生講座なのか、僕らの生き方を再生してくれているのか、分からなくなってきます。(笑)
レポート③に続きます。