大地の再生講座 in 浜松天竜 レポート①
6月25、26日、矢野智則さんを講師に迎え『大地の再生講座 in 浜松天竜』を開催させて頂きました。全国を飛び回る矢野さんはじめ杜の園芸のスタッフの皆さん、忙しい中ありがとうございました。感謝いたします。
造園、林業、農業、土木、建築関係者や自然教室を運営している方やWEBデザイナーやプロダクトデザイナー、デスクワークの業種の方など幅広い分野の方々、二日間で述100名近く集まり、関心の高さがうかがえました。築200年は経つという古民家もなんとかもちました。(笑)
直前まで雨が降っていましたが、講座が始まると不思議と雨は止み、いよいよ講座開始になります。
このフィールドはかつては里山整備が出来ていた場所ですが、現代土木の道路開発、川の整備、などと合わせてここに人が住まなくなり放置されて、全体的に空気が滞ってきている。それを水脈を中心に地上部と地下部の風通しを良くし、空気と水が良く通る環境整備をしていきたい。始めから自然を相手にやることを決めるのではなくて、そこの自然や時間に合わせて直接向かい合いながらその場で即興で作業を進めていきたい。という矢野さんの言葉から大地の再生講座がスタートしました。
まずは、座学。
4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に環境を見ていくことができます。
地球環境はどのような分類でみていけるかというと、どこにいっても大地がありその大地の環境は骨格を作っている表層地質があり、その下には長い年月をかけて浸食や風化したり堆積したりできる土壌がある。この二つが基本的なものでこれが形を成してその場所場所のオリジナルな大地の形を成している地形がある。
環境の元になっている大地環境に2番の(生物環境)色んな動植物が生息している。その動植物とはちょっと異質な生活をしている人の生活相がある。
そして、次が矢野さんの講座の中でのポイントになってくると思います。
『気象環境』
地上部の空気と水が対流していく気象現象は大地の中にもあるということ。
雨が浸透し、土の中の土壌間隙の隙間は水だけなく空気も通っている。土の中の水の動きは空気と一緒に動いているということです。
それは矢野さんが現場で造園作業を通してわかってきたと言います。
土圧によって締め付けられいることで根の呼吸がしづらく苦しんでいる植物は、土の中の停滞している空気を抜いてあげれば中に溜まっている水も大気圧によって押し出されるように抜けてくる。空気と水の流れが改善されれば植物の根も呼吸しやすく元気になってきます。
空気圧を抜けば溜まっている水も湧出してくる。そういうのを見ていて土の中にも空気と水の対流があるというのが具体的に見えてきたと言います。
それは、山の斜面と尾根と谷から湧出していくる水の関係を見た時、植物の根が大地の中に張り巡らさせていてその隙間を大気圧のかかった空気が動き、そしてそれを追っかけるように雨の水が土の中に浸透し地形の落差によって空気が動き水が動き、谷へ綺麗な水が押し出されていくる。
今、気象庁がやっているのは地上の空気と水の流れのことだけですが、地下の中にも明らかに空気と水が流れている。血管のような脈となってそれは水脈となって川に流れている。地上の気象環境があるように地下にも気象環境があると言っていいのです。
表層地質、土壌と地形との3つの関係で地下の空気と水の動きが変わり、この3つの相互作用は大きく大地の気象環境を左右してくる。
大地環境と気象環境とがうまく相互作用をもたらしながら有機的な水と空気の流れを生みだされているところに動植物が呼吸できるよな環境を作り出している。
地下と地上の空気と水の循環、対流、動きが動植物の生活を決定的に裏付けていると言います。
こういう視点3つの大きな環境分類が動き続けているのは宇宙環境のエネルギーによって空気と水が対流し、地球の自転、月の引力などのエネルギーの相互作用によって地球の大きな3つの環境が動き続けている。これはミクロもマクロも同じように相似形のように繰り広げている。これが環境という世界である。
この4つの環境分類と8つの環境ファクターを元に現場を一つ一つ、大事に紐解くことで見ていくことでその場所のオリジナルを見れるようになれると思うので、参考にして欲しいと話してくれました。
そして、現代の人の生活環境は、地下の空気と水の流れがあるということを考えていない空間作りとなってしまっています。
道路はアスファルトなどで覆われ、建物基礎や土留めはコンクリート、川や水路は三面張りのコンクリートになり空気と水が通りづらい環境となってしまっています。かつてはコンクリートの代わりに石や土、木をなどの有機的な材料を使って結果的には空気と水が通る環境であったと言います。ここ50年で日本の素晴らしい風土を食いつぶしてきた。このままでは環境が悪化し災害という現象も起こり、人が住めない環境になってしまい、子や孫の世代に引き継ぐことはできない。と話してくれました。
次に、古民家周りの環境を矢野さんと一緒に見て回りました。
この古民家と里山のフィールドの象徴的なところの一つがこの樹齢500年の杉と石垣です。
石垣と植物の根で立体的な組み合わせで土圧を支え、浸透してきた水も分散させたりして敷地を安定してくれています。
植物の根が石垣を崩さないで安定させるには空気と水が程よく循環していないと保たれない。
空気と水の循環を人工地形の中にも取り込んであげれば、植物の根が喧嘩しないでうまく保全し続けてくれる。
セメントを使わなくても土の中に空気と水が動く視点や技術があれば、何百年も保つことができる。それがここで証明してくれています。
先人の人たちの知恵はすごいものです。これは、日常の作業を通して何百年も伝えられた技術なのでしょう。
レポート②に続く