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「さくら通り改修事業に伴う街路樹についての意見交換会」

2015.02.17 |

2月7日、東京都国立市の「さくら通り改修事業に伴う街路樹についての意見交換会」にぼくも行ってきました。8日にTBS系の番組『噂の東京マガジン』で放映されたので知っている方も多いでしょう。詳しい内容はこちらを参照にしてください。
前田さん開花<写真:高田造園設計事務所さんのブログより>

道路整備に伴い、不健全な桜の木が伐採されようとしています。既に伐採されてしまった区間もあり、それを見た市民がなんとかこの桜を残せないかと立上がり伐採を止める運動がおこりました。この日まで、中々市民の意見は聞いてもらえずに市民の熱意でやっと行政との意見交換会が開催されたところでありました。
伐採されようとしている桜はおおよそ50年。50年もの間、市民と共に成長し、街に潤いを与えそこを訪れる人たちの心を癒し、豊かにしてくれたのであります。簡単に伐採、植えかえをしてはいけません。根上りによる歩道の段差の問題はありますが、みんなで知恵を出せば桜と人は共存できるはずです。そもそも、今回の道路整備は車線4車線から2車線に減らし歩道と自転車道を作るという内容です。車道を増やす訳ではありませんので、桜を生かす治療が施しやすい条件なのです。

今回の件は造園仲間(仲間と言ったら失礼ですが)の高田造園設計事務所の高田さんや中央園芸の押田さんが関わっていることで知ることになりました。高田さん達の話しによると不健全木と判断された木の樹勢はまだまだ良好で、根を中心にその環境条件を改善することでまだまだ数十年は健康に生きていく可能性を持っていると言います。また、不健全木と判断された木が伐採されることで日照環境はがらっと変わり健康で残される木にとっても悪影響を及ぼすことにもなります。木は人間もそうですが、1本で生きている訳ではありません。厳しい太陽光やアスファルトからの輻射熱をお互いが寄り添って守り合いながら生きているのです。健康と判断され残される木もいずれは不健全木になり伐採対象となりえるのです。これではいたちごっこで根本的は解決にはなりません。

この問題、街路という限られた環境でどうしたら人と樹木が共存し安全で安心して過ごせる街を作れるのかを考えていかないといけなければなりません。国立市だけの問題でなく全国的にも起こりうる問題、もしくは既におこっている問題であります。浜松市を見ても街路樹はぶつ切り剪定をされています。景観もなにもありません。

IMG_3636意見交換会では、高田造園設計事務所の高田さんから代替案が発表されました。樹木の根を切って歩道を平にするのではなく、根に負担を掛けない様に舗装せずに段差のない根上がりに合せて木製デッキで流線型にする、人にも木にも優しい計画であり人と木が共存できる次の世代にも繋げられるプランであります。
大地の再生師の矢野智徳さんからは高田さんに付加えるように今回の道路整備で大きく見逃している点がある。それは根本的な大地の改善が必要だと言います。大地の下のレキ層が目詰まりを起こしていてコンクリート化としている。ここの空気と水の流れを改善しなければ同じことだ。植えては枯れてまた植え替えるの繰り返しになってしまいます。この点は都市化、機械化が進んだ都市構造の大きな問題であります。まだまだ、知れ渡っていないことですが、とても大切なことであります。
秋田県の街路樹剪定の専門家の福岡徹さんも話しをされました。福岡徹さんはお子さんが『なんであの木は腕が無いの?!』ということからぶつ切り剪定されている街路樹を自然樹形剪定にするように地元行政に訴え変えてそれを実現してきた方です。樹木の剪定の管理でも十分に桜は長生きさせられる。寿命100年と言われるソメイヨシノであっても、街路という厳しい環境でも可能であると言われました。

色々な専門家の知恵と経験からすれば問題は解決できることが分かります。今回の問題で危険木だから伐採して若木を植え替えるという単純な考えでなく今ある樹々を残し、人と木が共存できる次の世代にも繋げられる新たな都市モデルとなれるチャンスが国立市にはあるのです。是非、モデル都市と国立がなりココから全国へと発信し、東京オリンピックで世界へアピールするチャンスでもあるのです。

街路樹だけの問題でもありません。庭だけでなく外構の提案もするぼくの仕事でなるべく構造物を作らずに樹木を中心に提案するようにしているのですが、樹木は管理が大変、落葉などで近隣に迷惑かけたらどうするのかという話しになることが多いです。そうではなく緑は共有財産で緑が無ければならないものだとなって欲しいのです。緑の力や役割など、緑があることでどれだけ私たちに力をくれるていることだろう。緑に生かされていると感謝しなければならないと思うのです。やっぱり緑は厄介ものだった10年後、50年後には邪魔になるものだと認識されるのは悔しいです!テレビ放映を見ていたら道路整備賛成派の意見として桜が楽しめるのは1年の内ほんの一時だけだからしっかりと凸凹の舗装を整備して欲しいという意見がありました。木は花を楽しむだけではありません。あれだけの樹形があれば夏の道路への日射しを遮り木陰よってアスファルトの輻射熱を抑えてくれます。涼しい風の道も作ってくれます。『お陰さま。』というすばらしい言葉があります。木が作ってくれる木陰によって昔から感謝されたものだと思います。この機会にもう一度、緑の有難さを考えていく必要があると思います。