緑の中を吹き抜けるそよ風、木漏れ日をつくる木々、日本人は豊かな自然に恵まれ、五感を澄ます「心地良さ」を大切にしてきました。これからの住環境を考えていくにあたり、こうした日本人が大切にしてきた心の豊かさを、暮らしにもっと取り入れる必要性があると感じています。自然の森を感じるような「雑木の庭」を通じて、心がやすらぎ、季節を感じることができる生活を、多くの方に体感していただけることを願っています。
雑木の庭づくり、地形を活かした外構デザインは、人の手によってつくられるものですが、その原点は自然の中にあります。自然界では、土の中でも空気と水が重要な役割を担い、その役割を尊重しながら施工することが、健全な庭づくりに欠かせません。わたしたちは、自然環境と人の暮らしが調和することを大切にしています。
雑木の植栽は、板張りの外壁や直線が美しい四角いフォルムの建物によく調和します。建物とのバランスを考え、雑木の木立がアクセントになるように配置したエントランスは、自然の温かみを感じながらも、凛とした佇まいのファサードに仕上がります。
高低差のある斜面が特徴の敷地では、一定勾配だと水が浸透せずに表面で走り過ぎてしまうので、自然の山の谷と斜面と尾根が連なる地形にならって施工をします。石、丸太、植栽など、互いの配置や角度、土の傾斜を考慮した素材の組み合わせによって、水を蛇行させながら浸透させ、水と空気が集まり、深層にも水が浸透していきます。
庭に、野生のような自然を感じる空間を。石を整然と組むというよりは、川の上流から流れ落ちてきたイメージで無造作に据え、雑木や下草がその間から生えているように表現しました。樹木の蒸散作用と合わせて心地よい風が吹き、自然界にある小川のそばで暮らしているようです。
室内に居ても四季の移ろい、時間の変化を感じられる中庭。2階にいても緑が近くで鑑賞でき、また、1階のスペースには木陰が落ちるように、植栽の配置や高さを決めています。自然が見せてくれるさまざまな表情は、人間の五感に刺激を与えて、生活を豊かにしてくれます。
玄関までのアプローチで、木陰や風を感じるように。道路からの目隠しに植栽を使うだけでなく、建物の中からの見た目も考慮し、適度に外からの視界を遮り、木漏れ日や心地よい風を感じられるようにプランニングをします。
木々が健康的に生息するように、階層的に密植混色するようにし、自然の山の植生にならって樹種や配置を決めています。通気や水脈を考慮した施工を意識し、人間が作り込む植栽というよりは、自然に近づけた植栽を行っています。健康的な木々があれば、自然の恵みを頂き、四季の移ろいを感じられるのです。
石の色合いや質感を楽しめるデザイン。一部が浮いているようなデザインを採り入れ、フラットで特別な存在感を感じられるように工夫し、美術品のオブジェのようにも見えます。窓の位置や高さ、建物との調和にも配慮して、緊張感のある特別な空間をつくることができます。